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「…………それで何の用なの?」
千映さんが不機嫌そうに美亜さんに質問する。
「ちょっと、今度の仕事を手伝って欲しいのよ」
「また? 前に手伝った時に、これで最後って言ったよね?」
「しょうがないでしょ。うちの唯一の社員が骨折して入院中なんだから。とりあえず、明日、依頼人に会って欲しいの」
「明日? 明日ならどっちにしてもダメだよ。私、印刷屋さんとの話し合いがあるから」
「はぁ? そんなのキャンセルすればいいでしょ」
美亜さんが片方の眉を吊り上げた。
「どうせ、客が来ない映画のチラシの印刷でしょ? そんなのやらなくてもいいって。というか、もう、映画館の仕事なんて辞めちゃいなよ。うちの探偵事務所であなたを雇ってあげるから。そのほうがあなたの能力を発揮できるでしょ」
「私は探偵なんてやる気がないし、一生、映画館の仕事を続けるから」
「…………ほんと、頑固なんだから」
「第一、お姉ちゃんの探偵事務所だってそんなに儲かってないでしょ?」
「だから、あなたの力を借りたいのよ」
美亜さんは千映さんの手をしっかりと握った。
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