第二話『プリティ・ウーマン』

18/89
前へ
/258ページ
次へ
「勝手に決めないで!」 千映さんが僕と美亜さんの間に割って入った。 「悠人さんは『名画座パラディーゾ』の大切なスタッフなんだから、お姉ちゃんには貸せません!」 「いいじゃない。前にあなたが新作の映画を観に行きたいからって、私に留守番を頼んだことがあったよね?」 「そ、それは半年以上前のことだから」 「でも、貸しは貸しだよね? バイト料も受け取ってないし。あ、私の仕事をあなたが手伝ってくれた時は、日当を払ったっけ。たしか、そのお金でこの映画館の備品を買ったんだよね。新しい掃除道具とか」 「…………」 無言になった千映さんを見て、美亜さんはにんまりと笑う。 「たった数日だし、今度もちゃんと日当を払うから。お互いに困った時は助け合うのが姉妹でしょ?」 「私のほうがお姉ちゃんを助けた回数が多いと思うけど…………」 「まあまあ。細かいことは気にしない。とりあえず依頼人には、朝早く、うちの探偵事務所に来てもらうように手配するから、その時だけは千映もつき合ってよ。その後は悠人君にお願いするからさ」 そう言って、美亜さんは僕の肩に手を回した。 「というわけで、明日からよろしくね。悠人君!」
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加