第二話『プリティ・ウーマン』

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「お世辞はいいよ。僕はファッションにこだわりがないし、イケメンってわけでもない」 「は、はは…………。ま、まあ、男は外見より、経済力ですから」 「そっちなら、人並み以上にあるよ。去年の年収は四千万以上だし、貯金も九桁だから」 「きゅ…………九桁? ってことは、一、十、百、千、万…………」 「一億以上だよ」 千映さんが美亜さんの耳元に口を寄せる。 「そっ、それは円でですよね? ジンバブエドルとかではなく」 「当たり前だよ」 美亜さんの質問に、原田さんが呆れた顔をした。 「僕は小説家なんだ。数年前に書いた小説がヒットしてね。百万部以上売れたんだよ。そして、その作品は映画化もされた」 「『死の歯車』ですよね。二〇一五年公開のホラーミステリー」  千映さんがそう言うと、原田さんのアゴが外れたように大きく開いた。
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