第二話『プリティ・ウーマン』

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「どっ、どうしてわかったんだ?」 「映画を観ましたから」 「い、いや、映画を観るだけじゃ、僕が『死の歯車』の作者とはわからないだろ?」 「わかりますよ。数年前にヒットした小説。作者は男性。百万部以上売れた作品で映画化された情報がありますから」 「それでも、その条件にあてはまる作品は十作品以上あるはずだぞ?」 「あとは、そのスマートフォンと時計ですよ」 千映さんは原田さんのスマートフォンと時計を続けざまに指差す。 「原田さんはスマートフォンの壁紙を歯車にしていますよね。そして、時計は歯車が見えるスケルトンタイプです。ファッションにこだわりがないって言ってましたけど、その時計だけは高価だし、不自然です。今の時代、時間はスマートフォンで確認できるから、時計をつける方は少なくなっています。しかも小説家ならなおさらでしょう」 「あ…………ああ」 「『死の歯車』には歯車マニアの殺人鬼が登場します。それだけの情報があったら、原田さんが書いた作品がなにかは予想できます」 「…………はぁ」 感嘆の声が原田さんの口から漏れた。 まあ、千映さんの能力を体験したら、大抵は驚くよな。
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