第二話『プリティ・ウーマン』

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「最初はキャバクラなんて行きたくないと思っていたよ。派手な女性が苦手だったし、風俗系の仕事に偏見も持っていた。それに僕は女性経験が豊富なわけでもない。胸元が開いた服を着た麗華が隣に座った時も、なにを話したらいいのかわからなくて焦ったよ」 「それなのに麗華さんと仲良くなれた?」 「麗華が僕の小説を読んでいたからね」 液晶画面に表示された麗華さんに、原田さんは愛しい視線を送る。 「麗華は派手だけど趣味が読書でね。年間に百冊以上の小説を読むらしい。それで僕が『死の歯車』の作者だとわかると瞳を輝かせてさ。僕のファンで『死の歯車』が一番好きな作品って言ってくれたんだ」 「それは作者として嬉しいでしょうね」 「ああ。最初はお世辞かと思ったんだけど、麗華はしっかりと作品を読み込んでいたからね。ヒロインの心情や歯車にこだわる殺人鬼の思考を深く理解していたよ。そして、読書マニアも気づいていなかった仕掛けに彼女だけは気づいた」
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