第二話『プリティ・ウーマン』

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「いや。恋愛物だよ。小説家とキャバ嬢のね」 「え? それって、もしかして…………」 「ああ。人物は僕と麗華がモデルだよ。ストーリーや細かい設定は現実とは違うけど」 「どんなお話なんですか?」 「貧乏で売れない小説家が家賃を払えずにアパートを追い出されてしまうんだ。そんな小説家を心優しいキャバ嬢の麗華が助けてくれる。数十年後に小説家がやっとヒット作を出して、二人は子供と孫に囲まれてやっていなかった結婚式をあげる。驚きはないし、派手なシーンもないけど評判はいいよ。十日前に発売されて、もう重版が決まったから」 「はい。素敵な物語だと思います」 「麗華はあまり気に入らなかったみたいだけどね」 原田さんの顔が歪んだ。
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