第二話『プリティ・ウーマン』

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美亜さんは、親指の爪を鮮やかな色をした唇に寄せる。 「どっちにしても証拠がいるのよね。千映の能力でキャバ嬢がウソをついていましたってわかっても、どうせ信じてくれないから」 「原田さんは信じてくれるかもしれませんよ。さっき、千映さんの能力に驚いていたし」 「それでもダメなの。調査報告書に『スタッフがそう思いました』って書くわけにもいかないから。千映の能力は調査の方向性を決めるだけ」 「方向性ですか」 「うん。例えば、誰が犯人かを千映が当ててくれれば、その相手だけを調査すればいいからね。これは経費的にもすごく助かるのよ。今回はあんまり意味がないけどさ」 「それはわかります」 僕は隣にいる千映さんをちらりと見る。 経費的なこともあるけど、千映さんが探偵を始めたら繁盛するのは間違いないだろうな。 仕草や言葉から相手の心が読めるし、読唇術もできるんだから。
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