第二話『プリティ・ウーマン』

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美亜さんは原田さんが書いた麗華さんの住所と勤め先のメモを確認する。 「どっちも尾道市内か…………。とりあえず、今日のところは対象者の尾行かな」 「尾行って意味あります?」 「多少はね。どうやら、対象者は今日、久しぶりに店を休むみたいだから。親が癌で入院している状況なのに遊び回っているのなら変でしょ?」 「たしかにそれは変か…………」 「他にも対象者のウソがばれるパターンがあるよ。例えば、今日、遊び回っていたのに、原田さんには親の見舞いに行ったと話すとかね。そうなってくれればラッキーかな」 「あ…………そっか。それでもウソがばれますね」 「ふふふっ! やっと悠人君も私の実力を理解したようね。まあ、私は探偵になる為に生まれてきたような女だから。映画『アンタッチャブル』のマッチのミスにも気づいたし」 「マッチのミス? なんですか? それ」 「姉の唯一の自慢なんです」 千映さんが恥ずかしそうに答えた。 「『アンタッチャブル』で小道具のミスがあったんですよ。殺し屋がマッチを持っているシーンがあるんですけど、後でそのマッチの本数が増えているんです。それに運よく気づいた姉は、鬼の首を取ったように毎日自慢していたんです」 「運よくじゃないから!」
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