第二話『プリティ・ウーマン』

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僕は美亜さんの後を追いかけて走り出す。 さっき、麗華さんは僕たちがいた方向を見ていた。 僕たち以外にも周囲に人がいたから大丈夫だと思うけど。 白いビルの角を曲がると、前を走っていた美亜さんの足が止まった。 「ストップ! 隠れて!」 僕は素早く雑貨屋の看板の陰に身を隠す。 「どうやら、バレていないみたい」 美亜さんは僕の背中に手を乗せて、ふっと息を吐き出す。 「麗華さんはいたんですか?」 「うん。ぶらぶらと前を歩いているよ…………と、レストランに入った」 「レストラン?」 僕は看板の陰から顔だけを出した。 数十メートル先に洋風のレストランがある。 どうやら、麗華さんはそこに入ったようだ。 「よし! これなら同僚が昼食の場所を探しているパターンが使えるね」 「僕たちも入るんですか?」 「虎穴に入らずんば虎子を得ずよ。上手く話を合わせてよね」 そう言って、美亜さんはぐっと親指を突き出した。
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