第二話『プリティ・ウーマン』

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十分後、四十代ぐらいの男が店に入ってきた。 男は無精髭を生やしてサングラスをかけている。 服は黒のシャツにデニム製のジーパン。サラリーマンではなさそうだ。 男は麗華さんのいる席に当たり前のように座った。 僕は目で美亜さんに合図を送る。 美亜さんは小さく頷くと、上着のポケットから細長い機械を取り出した。 ボイスレコーダーのようだ。 「で、なんの用だ?」 男の声が店内に流れるクラシックの音楽に混ざって聞こえてきた。 「突然、呼び出されると困るんだよ。こっちは別の仕事もやっているんだから」 「直接会って話したいことがあったんだよ」 麗華さんが低い声で言った。
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