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麗華さんと三木さんが店から出て行くと、美亜さんはテーブルから身を乗り出して、僕の肩をパンと叩いた。
「やったよ、悠人君! 録音も三木さんの写真も撮れたし、これで事件はほぼ解決ね」
「そう…………ですね」
「ん? 嬉しくないの?」
「いや、原田さんのことを考えると、大喜びはできないですよ」
僕はコップに残っていたフルーツジュースを一気に飲み干した。
「探偵事務所に依頼までして、その結果がこれですよ。きっと、すごく落ち込むんじゃないですか」
「それはしょうがないって。多分、原田さんも覚悟していたと思うよ。対象者が金目当てだったことをさ」
「金目当てか…………」
「お金は大切だからね。今の時代に生きていくには絶対に必要なものだよ。お金がなければ住む場所も手に入らないし、ここでランチを食べることもできない。悠人君もそれはわかるでしょ?」
「…………ええ。お金がなくて野宿も体験しましたから」
自分の肩がずっしりと重くなった気がした。
麗華さんがお金を欲しがるのは理解できる。
それは美亜さんが言うようにこの世界で必要なものだから。
でも、人を騙してお金を手に入れるなんてやってはいけないことだ。
きっと、麗華さんはその代償を払うことになるだろう。
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