第二話『プリティ・ウーマン』

72/89
前へ
/258ページ
次へ
呆然としている原田さんを押しのけて、美亜さんが千映さんの肩を掴んだ。 「千映っ! なにをバカなこと言ってんの? あなたもボイスレコーダーの音声を聞いたでしょ?」 「うん。だから、あの会話が演技だと思ったんだよ」 「演技って三木も?」 「ううん。三木さんの言葉や口調は自然だったかな。でも、麗華さんの言葉にはいくつかの違和感があったよ」 「違和感なんてなかったけど。そうだよね? 悠人君」 「え、ええ。僕も気づきませんでした」 僕は美亜さんの言葉に同意する。 僕は声だけじゃなく、あの時、麗華さんと三木さんの姿も見ていたんだ。 でも、怪しいところはなかったはずだ。 千映さんの瞳が真っ直ぐに僕を見つめている。 自信に満ち溢れた彼女の瞳を見ていると、自分の目と耳で確認した事実が揺らいでくる。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加