第二話『プリティ・ウーマン』

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千映さんの質問に、原田さんは口を金魚のように動かした。 「そ、それは…………」 「逆なんです」 「逆ってなにがだよ?」 「麗華さんは『純粋な白』を読んで感動したんです。自分がモデルであるヒロインの純粋さと献身的な愛に。そして現実の自分を恥じた。伯父の三木さんと組んで結婚詐欺を繰り返していた自分が汚れていると思ったのかもしれません。だから、『純粋な白』を素直に素晴らしい作品とは言えなかったのでは?」 「まさか、そんなこと…………」 「映画の中には、犯人がある目的のためにわざと警察に捕まるシーンがよくあります。『ダークナイト』のジョーカーは有名ですね。彼は邪悪な目的のために捕まりましたが、麗華さんは、もう悪いことはしたくない、これ以上、罪を重ねたくないという気持ちで捕まりたいと思ったんじゃないでしょうか。そして、小説の中の麗華のようになりたいと」 「小説の中の麗華のように…………」
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