名画座パラディーゾ 朝霧千映のロジック

第二話『プリティ・ウーマン』

「もちろん、これは想像ですけど」

千映さんは黒曜石のような瞳で原田さんを見つめる。

「原田さんは『プリティ・ウーマン』を観たことがありますか？」

「あ、ああ。『プリティ・ウーマン』なら観たことあるよ。有名な映画だからね」

「『プリティ・ウーマン』のヒロインのビビアンは最初お金目的で、実業家のエドワードとつき合っていました。娼婦のビビアンにとって、お金は生きる為に必要だったのでしょう。でも、彼女は変わりました。エドワードを本気で愛して、お金より大切なものがあることに気づいたんです」

「お金より…………」

抑揚のない声が原田さんの口から漏れる。

「…………バカな。それは映画の話じゃないか。フィクションと現実は違うんだ」

「私には麗華さんとビビアンは似ているように思えるんですけど。大金が手に入るチャンスがあったのに、それを愛のために捨てたところとか」

「愛なんてあるわけがない！」