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原田さんはそう言って、頬を緩めた。
「君は変わっているな」
「そうですか?」
千映さんが不思議そうな顔で原田さんを見つめる。
「自分では普通だと思っているんですけど」
それはないな。千映さんが普通なわけない。
「悠人さん…………」
「あ…………あはは」
僕はぎこちなく笑う。しまった。顔に出ていたか。
でも、僕だけじゃなく、千映さんを知っている人なら、みんな、彼女を個性的だと思っているはずだ。
「ところで」
原田さんがごほんと咳払いをした。
「千映さん。君に質問があるんだけど、いいかな?」
「はい。なんでしょう?」
「何故、君はそんなに麗華のことを気にしているんだ? 君にとっては会ったことのない素行調査の相手だろ?」
「依頼人である原田さんの幸せを考えたんです」
「僕の幸せ?」
「はい。最初に原田さんが麗華さんのことを私たちに話した時、顔を上げて、まぶたを閉じていました。その時の表情がすごく幸せそうに見えたんです。きっと、麗華さんとの素敵な時間を思い出していたんでしょう。その幸せな時間を取り戻せる可能性があるのなら、教えたいと思っちゃいますよ。だって…………」
「だって…………なんだい?」
「だって、映画と違って、現実ではハッピーエンドがいいですから」
そう言って、千映さんはにっこりと微笑んだ。
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