名画座パラディーゾ 朝霧千映のロジック

第一話『ショーシャンクの空に』

「映画？」

「はい。『ショーシャンクの空に』です。スティーヴン・キング原作の」

「そうなんですか。僕は観たことがなかったから」

「えっ？　『ショーシャンクの空に』を観たことがない？」

「ええ。空ってことは飛行機の映画か何かですか？」

「…………う、ウソ…………ですよね？」

「いや、ウソをつく理由なんて、ありませんし」

「ええええっ？」

突然、女の人は僕のよれよれのパーカーを掴んだ。

「『ショーシャンクの空に』を観たことがない人なんて、この世にいるはずがないです。刑務所映画の傑作じゃないですか。しかも、一九九五年度アカデミー賞で七部門もノミネートされた作品なんですよ？」

「はあっ？」

「主演があのティム・ロビンスですよ。彼は役作りの為に本物の刑務所に入って、囚人と会話したんです。それだけ、この役にこだわっていたんですよ。それを知らない？」

「知らないです」