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僕は映画を観たことがない。
いや、正確に言えば、映画館に行ったことがない。
今の時代、それは珍しいことでもないだろう。
映画館で映画を観なくても、作品は一年前後でDVDやブルーレイになり、それをレンタルビデオ店で借りることができるんだから。
ならば、家で観たほうがコスト的にもいいはずだ。
とはいえ、映画そのものに興味がない僕自身は、家で映画を観ることもほとんどなかったんだけど。
中学、高校生の頃は受験に集中していたから。
大学生の頃は、学費の為のバイトで忙しかったから。
そして、社会人二年目の今は、仕事を覚えるのに必死だから。
これからも映画館に行くことはないし、映画をわざわざレンタルビデオ店で借りることもない。
映画なんて、一本も観ていなくても人生には何の影響もないから。
そんな僕の考えが変わったのは、あの人に出会ったからだ。
僕より一つ年上の二十四歳の女性。
彼女は尾道の小さな映画館のオーナー兼支配人だった。
映画に興味のない僕が知り合うはずがない相手。
だけど、僕は彼女と関わりを持つことになった。
映画が好きで、映画を愛していて、映画に人生を捧げているあの人と。
天才的な洞察力と推理力を持つあの人と。
そして、その出会いが僕の人生を変えることになる。
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