第一話『ショーシャンクの空に』

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二十三歳の若い僕が真面目に仕事を探せば、すぐに見つかると思っていたが、現実は厳しかった。 普通自動車免許以外の資格がなく、新しい住居が見つかっていないことがネックになっているようだ。 他に自分の特技は、視力がいいことと動体視力に優れていることぐらいか。 でも、これは就職には役に立たないだろうな。 ハローワークの職員はパソコンを操作しながら、僕の顔をちらりと見た。 「…………うーん。少し待てば家電量販店の求人はあると思うけど、今はちょっとね。新入社員が入ったばかりのところが多いから。まあ、君は顔立ちが整っているから、面接にこぎつければ問題ないと思うよ。ちょっと暗い感じはするけど」 そう言って笑った職員に軽いいらだちを覚えた。 もし、僕に沢山の貯金があって、住む場所も決まっているのなら、ゆっくりと就職活動もできるけど、そんな状況じゃない。 暗いのは学生時代から言われていたことだから、事実だと思うけど。
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