第一話『ショーシャンクの空に』

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突然、黒猫が僕の曲げていた膝の上に乗り、滑るようにして僕の腹部に移動した。 そのまま、背中を丸めて顔を僕の腹部に押しつける。 「お、おい!」 黒猫の背中に手を置くが、猫が逃げる気配はない。 手の平に感じる生き物の温かさに、立ち上がろうとする気がなくなった。 どうやら、この黒猫は人に慣れているのだろう。 僕は尾道が猫の町と呼ばれていることを思い出した。 「湯たんぽ代わりにちょうどいい…………か」 僕は黒猫の喉を人差し指で擦った。 ゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえてくる。 「もしかして、僕を助けてくれようとしているのかな?」 僕の問いかけに黒猫が答えることはなかったが、そんな気がした。 最近は運に見放されていると思っていたけど、たまにはこんな幸運が僕に訪れてもいいだろう。 ささやかな幸運だけど。
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