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事務室のドアを開けると、藤崎店長が苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
その隣には、自分と同じ時期にスマイル電器に入社した女性社員の雪村さんがいる。
雪村さんは僕の顔を見て、整った眉を眉間に寄せた。
いつもなら、僕に笑顔で話しかけてくれるのに。
事務所の中に漂う不穏な空気に、頬がぴくりと動く。
何かあったんだろうか?
「どうかしたんですか? 藤崎店長」
「聞きたいことがあるから、呼んだんだ。瀬川…………瀬川悠人君」
藤崎店長は手にしていたタバコを机の上に置かれた銀色の灰皿に押しつけた。
頬のこけた青白い顔は神経質な彼の性格を具現化している気がする。
身長百七十センチの僕より背が高いのに、体重は僕と同じ五十キロ後半ってところだろう。
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