第一話『ショーシャンクの空に』

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僕は眠っているクロサワさんを片手で抱えながら立ち上がった。 「それで、なんで僕の名前を知っているんですか?」 「実は千光寺公園で、瀬川さんたちの会話を聞いていたんですよ」 「あ…………そういうことか。それで僕の名字が瀬川だって、覚えていたんですね」 「はい。名前のほうはさすがにわからないですけど」 「悠人です。瀬川悠人。あなたの名前は?」 「私は朝霧千映です。数字の千に映画の映で、ちはゆと呼びます」 千映さんはにっこりと微笑みながら、首を右に傾ける。 目元にある泣きぼくろが白い頬の動きに合わせて、僅かに動いた。 「千映さん…………ですか…………」 ちょっと珍しい名前だけど、本人の方がもっと変かもしれない。 外見だけなら美人でモテそうだけど。
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