第一話『ショーシャンクの空に』

4/97
前へ
/258ページ
次へ
「僕に聞きたいこと…………ですか?」 「ああ。デジカメ担当の君にね」 そう言って、藤崎店長は机の上に置かれていたデジタルカメラの箱を持ち上げた。 「この機種は知っているな?」 「え、ええ。SOMYのコンパクトデジカメの最新型です。手の平サイズで光学五十倍ズームがついていまして…………」 「商品説明はいい。問題はこの箱の中に入っている物だ」 「入っている物?」 「自分で確認したらいい」 そう言うと、藤崎店長はデジタルカメラの箱を僕に渡した。 箱を開けると同時に、数個の小石が手の平に転がり出てきた。 「い…………石?」 「ああ。そこらへんに転がっているような価値のない石だ。もちろん、ズーム機能はついていない」 「どうして、石がデジカメの箱の中に?」 「それを聞きたいから君を呼んだんだよ」 藤崎店長はイスに座ったまま、針のように目を細める。 「この箱に石が入っているのを発見したのは、雪村さんだ。君が接客中だったから、デジカメの在庫チェックをやらせていたんだが」
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加