第一話『ショーシャンクの空に』

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僕はポップコーンとペプシコーラを両手に持ったまま、肩を使って小豆色のドアを開けた。 視界の真ん中に白いスクリーンが見える。 その手前には百五十席程の座席があったが、そこに座っている者は数人しかいない。 「これが普通なのかな?」 「…………普通ね」 突然、背後から暗い声が聞こえてきた。 振り返ると、フリルがついた黒のドレスを着た少女がモップを持って立っていた。 二つ結びの髪型で顔は青白く、目は三白眼で唇は薄い。 華奢な体と感情が見えない顔は生気を感じられなかった。 なんだろう。 整った顔立ちで美人だけど、冷たい印象があるな。 それにこの服って、ゴスロリってやつかな?  こんな服を着て掃除をしているって、どういうことだろう? 「…………もしかして、この映画館のスタッフ?」 「モップを持っているんだから、わかるでしょ」
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