第一話『ショーシャンクの空に』

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「ああ…………映画って素晴らしいですー」 「ちょっと、千映さん」 うっとりとしていた千映さんの袖を亜里沙さんが掴んだ。 「そろそろ上映時間じゃないの?」 「あ! そっ、そうでした。悠人さんも早くお好きな席に座って下さい」 そう言うと、千映さんはスクリーンの前に移動した。 背筋をぴんと伸ばし、数名の客一人一人に視線を向ける。 やがて、彼女の桜色の唇がすっと開く。 透き通るような声が小さな劇場の中に響いた。 「本日は『名画座パラディーゾ』にご来場いただき、誠にありがとうございます。まもなく、予告編に続いて『ショーシャンクの空に』の上映となります。携帯電話、スマートフォンなどお持ちの方は電源をお切りいただくか、音の出ないように設定していただけるようお願いいたします」
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