第一話『ショーシャンクの空に』

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「梶原さんがデジカメの台数を間違えることで、自分を犯人ではないと悠人さんに思わせたい意図が見えたんです。犯人なら、盗んだ数を間違えるわけがないですからね」 「…………石川さんも関わっているんですね?」 「はい。彼女は容疑者の数を増やそうとしていましたよね。店長さんが怪しいとか、オーディオ担当の人が怪しいとか」 その時のことを思い出しているのか、千映さんは自分の頭を人差し指でトントンと叩く。 「…………多分、石川さんのほうがまとめ役だと思いますよ」 「まとめ役?」 「リーダーってことです。梶原さんが盗まれたデジカメの台数をわざと間違えた時、彼女は一秒以内に訂正していました。もし、彼女が梶原さんに頼まれてやっているのなら、一瞬の躊躇があってもいいでしょう。それに、梶原さんは何度も石川さんを見ていました。飼い主を見る犬のような目で」 「梶原君が…………」 「外見は梶原さんのほうがイケイケな感じがしますけど、内面は石川さんのほうが強いようですね。そして、それが悪い方向に向かってしまったようです。デジカメを盗んだ動機は当然お金でしょう」 「そんな…………」
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