第一話『ショーシャンクの空に』

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「最後に石川さんが、『新しい仕事先も一緒に探しますよ』って言ってましたよね。あれは、悠人さんに犯人捜しよりも、他のことをやってもらいたいってことですよ。そうすれば、悠人さんがデジカメを盗んだ犯人だったで、会社の調査が終わってくれるかもしれない。彼らにとっては嬉しいでしょうね」 憂いを帯びた瞳で、千映さんは僕を見つめる。 彼女の視線を振り払うように、僕は首を左右に振った。 「待って下さい! たしかに千映さんの言う通り、梶原君たちがデジカメを盗んだ可能性はあると思います。でも、絶対じゃない」 「そうですね。絶対ではありません。私が確信しているだけです。彼らがデジカメを盗んだと」 「そこまで言い切るんですか?」 「だって、悠人さんと離れた後、石川さんが言っていたんですよ」 「言っていた?」 「正確には唇の動きを読んだんです。私のいる位置から声は聞こえませんでしたけど、彼女の唇が動いていました。『上手くいったね』って」
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