第一話『ショーシャンクの空に』

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「よかった。本当は『さん』の動きは見えにくかったんですけど、悠人さんなら、私の名前にさんをつけると思って」 「もっ、もう一度だけいいですか?」 「何度でもどうぞ」 「じゃあ…………」 さらに数メートル後ずさりする。 もう、千映さんとの距離は五メートル以上離れているだろう。 これだけ離れれば、口の動きもわかりにくいはずだ。 と…………僕が言いそうにない言葉を選んだほうがいいな。 さすがに千映さんのフルネームは予想しやすかっただろう。 今度は絶対に当てられないようにしてやる! 「…………よし! じゃあ、今から声を出さずに口を動かしますから」 「『グリーンマイル』です」 「え…………?」 僕は大きく口を開いたまま、千映さんを凝視した。
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