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「よかった。本当は『さん』の動きは見えにくかったんですけど、悠人さんなら、私の名前にさんをつけると思って」
「もっ、もう一度だけいいですか?」
「何度でもどうぞ」
「じゃあ…………」
さらに数メートル後ずさりする。
もう、千映さんとの距離は五メートル以上離れているだろう。
これだけ離れれば、口の動きもわかりにくいはずだ。
と…………僕が言いそうにない言葉を選んだほうがいいな。
さすがに千映さんのフルネームは予想しやすかっただろう。
今度は絶対に当てられないようにしてやる!
「…………よし! じゃあ、今から声を出さずに口を動かしますから」
「『グリーンマイル』です」
「え…………?」
僕は大きく口を開いたまま、千映さんを凝視した。
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