第一話『ショーシャンクの空に』

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無言になっていた僕の肩に千映さんの手が触れた。 「悠人さんは、どうされるんですか?」 「え? どうされるって?」 「梶原さんと石川さんに、このことを話すつもりなのかなって」 「…………話しても、しらを切るでしょうね」 「そうですね。多分、石川さんは否定するでしょう。表情や仕草で犯人がわかったって言っても証拠にはならないから。もちろん、『上手くいったね』と言ったことも否定するはずです」 「そうか…………」 「すみません。あまり、お役に立てなくて」 「とんでもない!」 僕は千映さんに頭を下げた。 「これでスッキリしました。誰が犯人かわからないと、ずっと、もやもやしちゃいますからね」 「それだけでいいんですか? 悠人さんは犯人扱いされて、電器屋さんを辞めることになったんですよね?」 「…………今更、会社に戻る気はないですからね。会社もそれを望んでいるとは思えないし。それに…………」
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