第一話『ショーシャンクの空に』

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夢中になって在庫チェックの方法を説明していると、千映さんの目が細くなった。 「悠人さんは電器屋さんの仕事が好きだったんですね」 「…………どうかな。真面目にやってきたとは思っているけど、千映さんのような情熱はなかったかもしれない」 「私ですか?」 「はい。千映さんは映画が好きで、その映画に関わる仕事をしている。それが僕は羨ましいです」 「悠人さんには好きなことってないんですか?」 「好きなこと…………か」 視線をエントランスホールの天井に向けて、僕は眉間にしわを寄せる。 「そう言えるものはないかもしれないな。運動神経は悪くないんですけど、スポーツはやらなかったし、読書やゲームにも興味は持てなかった」 「それなら、これから好きなことを見つけてみたらどうですか?」 「これから…………ですか?」 「ええ。悠人さんは若いし、好きなことがきっと見つかりますよ。ちなみに私のオススメは…………」 「映画ですね」
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