第一話『ショーシャンクの空に』

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「あ…………そう言えば、何で尾道は映画の町って呼ばれているんですか?」 「尾道出身の有名な映画監督がいるんですよ。大林宣彦監督なんですけど、その方が尾道を舞台にした映画を何本も撮ったのがきっかけですね」 「そういうことか。この町には映画館が少ないみたいだから、ちょっと気になっていたんですよ」 「尾道にある映画館は、ここを含めて二軒だけです」 沈んだ声が千映さんの口から漏れる。 「デジタル映写機やスクリーン、映像データーを扱うサーバーを揃えると一千万円以上かかるんですよね。せっかくの映画の町なんですから、もっと、映画館が増えてくれればいいんですけど」 「ライバルが増えていいんですか?」 「だって、新作の映画を観るのに、他の町に行くのが大変だから」 「あー、たしかに映画好きの人なら、新作がDVDやブルーレイになるのを待とうなんて思わないか」 「ええ。少しでも早く新作の映画を観たいし、やっぱり、映画を観るのなら映画館がベストですから。でも…………」 「でも…………何です?」 「最近はあんまり映画館で映画を観られないんです。いろいろありまして…………」
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