第一話『ショーシャンクの空に』

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その日の夜、僕は千光寺公園のベンチに座っていた。 既に午後十時を過ぎており、人の姿もまばらになっている。 結局、今日はポップコーンしか食べることができなかったが、さっき、水を大量に飲んだせいか、空腹感はあまりない。 「問題は寒さだな…………」 パーカーのフードを深くかぶり、両手をポケットの中に入れた。 それだけでも、少し暖かくなった気がする。 今日と明日、頑張れば、月曜日にはネットカフェでゆったりできる。 そこでシャワーを浴びて、食事して、ハローワークに行って…………。 「瀬川君…………」 突然、自分の名字を呼ばれて、僕は顔を上げた。 目の前に、元同僚の雪村さんがいた。 雪村さんは心配そうな顔を僕を見つめている。
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