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「…………藤崎店長」
自分の声とは思えない暗い声が口から漏れた。
「うちの会社って、今年から新入社員の数を大幅に減らしましたよね。その分、パートの数を増やすとか。正社員の希望退職者も募集しているみたいだし」
「突然、何を言い出すんだ? まさか、君を退職させる為に、私がデジカメを盗んだと言いたいのか?」
「そんなことは思っていませんよ。でも、藤崎店長は僕を辞めさせたいと思っている」
「…………仮に私がそう思っているのなら、君が使えない社員だってことだよ」
肩をすくめて、藤崎店長は言葉を続ける。
「君は真面目で勤務態度は悪くない。商品知識も豊富だ。だが、多くの顧客を持っているわけでもなく、売上げ成績も普通だ。それなら、バイトでも君の仕事はやれる。そうは思わないか? 高い給料を払う意味などないと」
「そう…………ですか」
何かが自分の体から抜けたような気がした。
スマイル電器に入社して一年、自分なりに必死に仕事をしてきた。
福岡の飯塚店から、現在の尾道店に突然転勤を言い渡された時も、唯々諾々唯々と従った。
その評価がこれか…………。
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