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千映さんはふっと息を吐いた。
「雪村さんの動体視力が優れていて、一番下に積まれていたデジカメが落ちた位置を把握していた可能性もゼロじゃありません。でも、他にも彼女を疑う要素があるんです」
「他にもですか?」
「はい。石川さんと梶原さんの会話ですよ。梶原さんが『怪しくない奴はいないか?』って石川さんに聞いたら、彼女は『雪村さんは犯人じゃない』みたいな言い方をしていました。犯人の二人からすれば、少しでも容疑者は多いほうがいいのに、彼女だけは犯人から除外しようとしていたんです」
「あ…………」
「あの時、二人は悠人さんを騙す演技をしていました。そんな二人が悠人さんに伝えた情報の一つが『雪村さんは犯人じゃない』です。変だと思いませんか?」
千映さんの瞳に強張った顔をした僕の姿が映っている。
「悠人さん…………三人がデジカメを盗んだのなら、その動機はお金が有力ですよね? その場合、お金は三人で分けることになります」
「…………そう…………ですね」
「盗まれたデジカメの数は何台でしたか?」
「…………三台です」
「犯人が三人なら、ちょうどいい数ですね。計画を立てた時にも、わかりやすかったでしょう。『デジカメ一台分が取り分』って」
「…………そうか。雪村さんも…………」
仲良くしていた元同僚の顔が脳裏に浮かんだ。
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