第一話『ショーシャンクの空に』

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「まあ、なんとかするよ。本当は雪村さんにもお金を貸せればいいけど…………あ、五万円ぐらいならなんとかなると思うけど。月曜日に定期預金を解約する予定だから」 「…………ううん。瀬川君からお金を借りることはできない。これ以上、迷惑はかけられないから」 雪村さんはきっぱりとそう言った。 「でも、そう言ってくれるのは嬉しかったよ。私が犯人だとわかっているのに」 「事情もわかったからね。それに、雪村さんは同期で、デジカメの売り場作りを手伝ってくれたこともあった」 「…………それだけ…………か」 「ん? それだけ?」 「ううん。なんでもない」 雪村さんは悲しげに微笑んだ。 「ちょっと期待した言葉と違っていただけだから」 「期待した…………」 「いいの。気にしないで。迷惑をかけた相手に何を言ってるんだろうね。私って」
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