第一話『ショーシャンクの空に』

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雪村さんは僕の目の前で深く頭を下げた。 「本当にごめんなさい。謝ってすむようなものじゃないけど…………」 「もういいよ。それに、雪村さんは自分からデジカメを盗んだ犯人だと僕に告白しようとしてたし、藤崎店長に話すんだろ?」 「…………うん」 「それなら、僕のことは気にしなくていいよ」 「許して…………くれるの?」 雪村さんの言葉に、僕は大きくうなずいた。 「君が喜んでデジカメを盗んだとは思ってないから」 「…………本当にありがとう。こんなバカな私を許してくれ…………」 雪村さんは嗚咽の声を漏らして両手で顔を覆った。 指のすき間から、涙が流れ落ちていく。 小刻みに震える彼女の肩はいつもより細く見えた。
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