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「何がおかしいんだ?」
藤崎店長が平手で机を叩いた。どうやら、僕は笑っていたようだ。
「すみません。何かおかしくなっちゃって」
「上司をバカにしているのか?」
「もう、上司じゃありませんから」
「はぁ? 何を言ってる?」
「この会社を辞めるって言ってるんです」
自然とその言葉が口から出た。
「僕はスマイル電器を辞めます。それを会社が望んでいるのなら、そのほうがいいでしょう。僕も会社の為に働く気持ちがなくなりましたから」
「…………言っておくが、君が辞めても、調査を止めることはないぞ。君が犯人だという証拠が出てくれば、警察に通報されることを覚悟したほうがいい」
「僕は犯人じゃありませんから、お好きにどうぞ」
藤崎店長に背を向けて、僕は事務室を出る。
閉めたドアの向こう側から、灰皿が床に落ちる音が聞こえてきた。
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