第一話『ショーシャンクの空に』

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その日の夜、僕は御袖天満宮の近くの林にいた。 その場所は木々に囲まれていて 人の目と風を防ぐことができる絶好の野宿ポイントだった。 定期預金を下ろしたから、まだインターネットカフェに泊まることはできるけど、なるべく節約したい。 スーパーからもらってきたダンボールを敷いて、その上に腰を下ろす。 視線を上げると、青白い月に雲がかかっていた。 「明日は雨になるかもしれないな…………」 雨になったら、インターネットカフェを利用するしかないか。 どっちにしてもアパートを借りるなら敷金もいるし、日雇いのバイトも探してみるか。 正社員の仕事は当分見つかりそうにないし。 膨らんだボストンバッグを枕にして、僕はまぶたをゆっくりと閉じた。
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