第一話『ショーシャンクの空に』

93/97
前へ
/258ページ
次へ
「あの辺で野宿もいいですよね。御袖天満宮は映画のロケに使われたんですよ。あそこの石段は大林宣彦監督の『転校生』で一夫と一美が転げ落ちて、心と体が入れ替わるシーンで…………」 「その話は後で聞きます。それより、僕に何の用です?」 「あ、そうでした」 千映さんは持っていたモップを壁に立て掛けて、わざとらしく咳払いをした。 「えーと…………実はこの映画館にはスタッフがいて…………」 「知ってますよ。亜里沙さんですよね?」 「亜里沙さんともう一人いたんです」 「もう一人いた?」 「はい。一ヶ月前に辞めたんですけど。それで、いろいろやらなければいけない仕事が溜まっているんですよ。私、映画館のオーナーでもあるから」 「ああ、そうでしたね」 「それで…………」
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加