174人が本棚に入れています
本棚に追加
「ダメだよ」
赤い唇を前にして
たまらず身を屈める凪を。
「こんなとこ誰かに見つかったら」
先手を打って僕は押し留めた。
言ってる傍から
「……ん?」
小走りに庭を駆けまわる足音が近づいてくる。
「隠れて!」
僕は思わず凪の手を引いて
蔓薔薇の生垣の裏に身を潜めた。
「向こうを――遠くへ入ってないはずです」
中川と使用人たちだ。
血相変えて裏庭の方へ駆けてゆく。
最初のコメントを投稿しよう!