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でも、夢のような日々は長くは続きませんでした。クラスメイト達が1人2人と森で遊ばなくなったから。
子供にしか見えない神様…みんな段々とその存在が見えなくなっていったのでした。
やがて私とピーターだけになり、15歳の夏、ピーターへの恋心を自覚したとき、私にも妖精は見えなくなっていました。
「…ピーター、たまには街で遊びましょう?」
「リン、それより君も神様に呼び掛けよう。昔みたいに」
ピーターは昔と代わらない無邪気な瞳で私に話しかけます。でも、今の私にはその瞳が何故か怖い。
「…ごめんなさい」
「…そう、君も行ってしまうんだね」
ピーターは私の手をほどき背を向けました。
「…ピーター…」
呼び掛けても振り返りません。いつものように呪文を唱え、私にはもう見えない神様と戯れます。
「………ピーター。
『愛してる』」
その言葉にピーターが反応し、私を振り向きました。
「…リン?今のは?神様への呪文?」
そう聞く彼の瞳に私は映っていなくて。私にも彼の見ている世界は見えない。
「…違うわ。私の祖国の言葉。
東洋の島国の…何てことはない言葉よ」
…それは、もう
決して届かない呪文でした。
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