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「一応社会人ですよ。何歳に見えますか?」 「大学生くらい…?」 「あはは、よく言われます。あなたも、学生じゃないですよね」 「学生ではないですね」  本当の年齢を言おうか迷って、結局濁した。わざわざ言う事じゃないし、何歳に見られようが奏多は気にしない。  ただ、上には見られないだろう、とは思う。そしてふと、何時だったか言われた言葉を思い出した。十二歳くらいだったか。  ――かなたはVolksschuleに通っていても違和感ないよね  どうせ子供だとあの時は膨れて、それで、相手はごめん、機嫌直して。そう笑ったのだ。  あの時よりも、自分は大人になれているだろうか。 「でも普通のサラリーマンにはみえな……あー、すみません」 「ん?」 「タイムアップ、です」  突然会話を切って謝りだした男は、残念そうにコートからスマートフォンを取り出した。立ち上がっているホーム画面に、何度か佐智の持っているスマートフォンで見た事のある緑色の通信アプリのアイコンが浮かんでいる。 「友達が戻ってこい、って」 「そうですか」 「俺から引き留めておいて、なんかすみません」 「いや、別に。大丈夫です」  案外、この男と話すのは悪い気がしなかった。佐智が聞いたら驚くに違いない。  自分でも、普通に話せていることに驚いている。 「じゃあ、また。おやすみなさい」 「……おやすみなさい」  にっこりと笑って手を振る男に、奏多も自然に表情を和らげて手を振りかえした。
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