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「落ち着いたか?」 「…ん、はぁ。……疲れた。肺痛い」 「当たり前だ」  頭を咎めるように叩かれた。かと思ったら、その手で撫でられる。 「もう上がりなさい」 「うん……」 「また寝て溺れられても困るからな」 「あー……」  こんな間抜けな死に方は、流石の奏多でもしたくはない。  先に風呂から出て行った佐智を見送って暫くした後、奏多もゆるゆると湯船から腰を上げた。  体だけ簡単に拭いて、大粒の水滴を髪から滴らせながら電気の点いているリビングに向かうと、濡れたシャツを脱いでいた佐智が思い切り眉根を寄せる。 「風邪ひくぞ」 「サチ兄そればっかり」  奏多は肩からかけているバスタオルを佐智に見せつつ、肩を竦めた。既にスイッチのついていた暖房の温度を上げ、数少ない衣服の入ったカラーボックスを漁る。中身がほとんどないのは、ここずっと服の洗濯を怠っていたせいだ。 「……明日洗濯するかな」  冬、かつ家に引きこもっているとは言っても、同じものを着続けるのに限度がある。作業量に多分の面倒くささを感じつつ、丸めて突っ込んでいたパーカーを取り出して、ソファで体を拭いている佐智にパーカーを投げた。  佐智の方がわずかに身長が高く奏多の方が細身だが、体格は二人大体一緒である。チノパンが濡れていることも横目で確認して、新調したばかりのジャージも取り出した。 「下も着替える?」 「ジャージで外出歩くのはちょっと」 「乾くまでいれば」  暗にだらしない格好で外(と言っても下のコンビニくらいしか行かないが)に出ている奏多を非難されているように聞こえて、奏多はじと目で佐智を批難する。
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