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 パーカーを着こんだところでジャージを渡そうとすると、手で制した。 「下のコンビニに行くからジャージはまだいい」 「濡れたの穿いてくの? 外寒いよ」  時たま暖かい日があるとはいえ、まだまだ夜の冷え込みは厳しい。いくらきっちりしていたいとはいえ、そのままではそれこそ風邪ひいてしまうのでは。  奏多の心配を、佐智は一蹴した。 「馬鹿。誰がこのまま行くって言った。ジャージでは行かないってだけだ。他のやつ貸しなさい」 「えぇ……」 「あとお前もコンビニついてくるんだぞ」 「なんでよ。やだ」 「なら、お前今日夕飯無しな?」  何か食べ物のストックがあるからわざわざ買わなくてもいい、と反論しかけて、そのストックを昼に食べたことを思い出した。佐智も、奏多が風呂に入っている間に確認していたのだろう。相変わらず抜け目ない。  断られたジャージをしまい直し、奏多は水の滴る髪の毛を乱暴にバスタオルで拭った。 「ジーンズ取ってくるから待ってて」  満足げな佐智を、水滴のついたレンズ越しに睨んだ。
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