390人が本棚に入れています
本棚に追加
「――…似てますか?」
「え? あ、はい。すごい似てる。よく言われませんか?」
ほとんど同一人物かと疑ってしまうほどよく似ている。兄弟と言われたら納得してしまいそうだ。
奏多はこういうのに疎い上に、そういう話をする友人がいないのであまりわからないのだが、男ぐらいの年齢であれば芸能に興味がある人間も多いので、話題に上っていてもおかしくないと思った。
なので、思ったままを訊いたのに、何故だか男は奏多の質問にかなり驚いていた。奏多もまさかの反応に、ぽかん、としてしまう。
「にて……、そう、ですね。似てます。よく言われる」
しまいには、男はくつくつと笑い出した。噛みしめるように奏多の問いに答えたと思ったら、顔を逸らして耐え切れなくなったように笑いを大きくする。
「っ、なんで笑うんですか?」
そんなに奏多はおかしなことを言っただろうか。それとも、奏多の目が節穴なだけで実際はそんなに似ていないのか。
突然笑われて、面白く思う人間はいない。楽しげな男とは反対に、奏多はむぅ、と口を尖らせて抗議した。
「なんでもないですよ」
「なんでもないのに笑うんですか」
「んー。強いて言えば、あなたが可愛かったから、かな?」
「は?」
収まりかけた笑いを引きずりながら告げられた言葉を、奏多は一瞬理解できなかった。
可愛い? 誰が? 奏多が?
脈略がなさすぎる。変にはぐらかされた気がして、男を睨め付けた。しかし男は、奏多の強い視線もどこ吹く風で、落ち着くために大きく深呼吸している。
最初のコメントを投稿しよう!