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 状況の理解がいまだに追いついていない。  佐智に強引に連れ込まれたキッチンで、使用頻度が低すぎて、埃をかぶり始めていた客用のカップをゆすぐ佐智の隣に立ち、奏多は先ほどコンビニで購入したインスタントコーヒーのドリップセットを開封していた。  食器棚も兼用している多目的キャビネットでは、電気ケトルが煮沸中のランプを点灯させている。 「奏多、何時の間にアマネと知り合いになったんだ。というかどこで会った?」  早口かつ小声で佐智が追及してくる。帰ってくる前までは普通の音量で話していた佐智が身を寄せて内緒話のごとく周囲を気遣っているのは、長年佐智しか入ったことのない奏多の城に、初めての客がいるからだ。  こっそり、その客に気付かれないように目だけで、ソファに座る後ろ姿を伺う。後ろから見ると短めの黒髪に覆われた頭が小さく形良いことが強調されていた。 「コンビニで会った」 「やけに親しそうだったのは?」 「別に親しくない。数回会って喋ったことがあるだけ」  佐智に合わせて早口で返しつつ、奏多は大きくため息を吐いた。  まったく、何がどうして、こんなことになったのか。  あの時、このまま男――今ソファに呑気に座っているアマネが、万が一ファンに見つかって騒ぎになってはまずい、と、奏多の家に招いたのは言わずもがな佐智である。奏多の許可は全く持って必要とされなかった。意義を唱える暇を与えられなかったとも言う。  そうして、素早く会計を済ませた佐智に背中を押されて部屋まで戻り、とりあえず何か飲み物を。と、佐智が渡してきたコーヒーの準備を進めていた。 「その会話からして珍しいんだ。お前、外で声かけられても無視するタイプだろ」 「あれは不可抗力だったっていうか……」  あまりにも好みの声だったのでつい興味が引かれてしまったというか。
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