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まだ少し風が冷たい公園のベンチ、暖かな日差しが春なんだと感じさせる午後。
隣を見ると小学生くらいの少女が大人しく座っている。
魔が差す、というのはこういうことか…
ため息をついて空を見つめる。
「おじさん。お腹すいた」
「あ、そうだよな…コンビニで何か買ったらお家に送ろう」
この子と出会ったのは1時間前、隣町の公園だ。
なぜか1人で長い時間、蟻を見つめ続けていた。
「誘拐するんじゃないの?」
「え?!まさか。そんなつもりじゃない」
言葉に驚いて少女を見た。
「ふーん…じゃあ、変なことしようと思ってたんだ」
「違う!それは決して違う!」
慌てて否定しながらも少女の得たいの知れない雰囲気に気圧されたように、ベンチから立つと後ずさる。
「でも…そうだな。そう思われて当然だ」
どこか寂しさを感じた彼女が気になったのと。
離れてから会うことも無くなってしまった子供を重ねてしまったのかもしれない。
「気にしなくていいよ。私には心配する大人も子供もいないから」
違和感のある言葉に、よく解らなくなる。
「お父さんとお母さんがいるだろう。友達は?」
「お父さんはいない。お母さんも最近いなくなった。友達なんていない」
愕然とする。
どういうことなんだろうか?
こんな小さな子供がどういう生活をしているのか謎だらけだ。
重ねて見ていたからなのか彼女の境遇を考えたからなのか、自然と涙が流れた。
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