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「おじさん!なんで泣くの。泣かないで」
彼女が目を大きくして慌てて側に来た。
涙を小さな手で拭ってくれる。
「大丈夫だ…僕は君の周りの大人と同じなんだ。ごめんな」
この子に謝っても仕方ないけれど、謝らずにいられなかった。
首を傾げて考えていた少女が呟いた。
「じゃあ、また話そう。そしたら私もおじさんも可哀想じゃなくなるかもしれない」
どう答えていいか悩んだけれど、彼女の寂しさが少しでも薄れるならと頷いた。
しかしこんなおじさんと友達じゃあ、良いことは何もないだろう…
コンビニで買ったおにぎりを黙々と食べながら歩いて駅に向かう。
話さなくても、電車に乗って見る夕陽はいつもより明るくて暖かい気がした。
「今日はおじさんと遊んでくれてありがとう。またここで会えたら話そう。気をつけて帰りなさい」
出会った公園に着いたが、帰る子供たちの後ろ姿がまばらに見える。
少女は何も言わずにブランコに座った。
心配で帰るに帰れない。
「お家に送るから帰ろう」
お父さんもお母さんもいない子を、このまま放ってはおけなかった。
もしかしたら施設に住んでいるのだろうか。
少女は無言のままポケットから携帯を取りだし、手慣れた手つきで画面を触ってからこちらへ差し出した。
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