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大学の卒業式らしい風景。
そこには綺麗に化粧をした、まだ20代前半くらいの女の子が着物を着て校舎の前に立っている写真だ。
少女によく似ていた。
「お姉さん?」
「私」
無表情に近い彼女が口元を上げる。
確かに子供らしからぬ表情。
嘘だろう?
すっぴんで、小学生みたいな背格好で、Tシャツ短パンの彼女を信じられないと見つめる。
でも…
「良かった」
ホッとして笑った。
「なにが?」
反応が意外だったのか眉を寄せて彼女が聞く。
「もし君がまだ子供だったら大人の意志でしか動けないから、心配だったし気になっていた。でも写真を見たら大学は卒業してるみたいだろう?辛いことがあっても、何とか乗り越えられると思ったんだ」
すっかり騙された自分だが、安堵で良かった良かったと呟いた。
「全然状況は良くないし、そんな簡単に乗り越えられないわよ」
フン、と鼻を鳴らした彼女が苦笑してブランコを降りた。
「おじさん。責任取って友達になってね」
「え、いや…」
こんな若い女の子と、それもどうなんだろうかと戸惑う。
「同じ曜日、同じ時間。多分ここに来てるから」
初めて笑った彼女はそれだけ言うと、走って行ってしまった。
どこまで本当か解らない少女…いや、女性か。
でも時折見えた寂しい瞳は真実だろう。
「僕も頑張らなきゃな」
もし全てが嘘だったとしても、今度会えたら昔話をしてみよう。
彼女の影響なのか少し軽くなった心に気付いた。
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