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「ふわぁああ・・・」
まったく春休みだっていうのに隣の家の犬が朝からうるさいったらない。犬には休むという概念が無いのかね。
平日も休日も関係なく、朝を知らせる雄鶏のように毎朝、毎朝吠え続ける犬のおかげで春休みもずいぶんと規則正しい生活を送らされている。
「これ以上健康でいい男になったらどうしてくれるんだ、っての」
俺はぶつぶつとつぶやきながら自室を出て一階のリビングへと向かった。あの犬と同じように、母は決まった時間に朝ごはんを用意してくれている。犬の鳴き声が聞こえたら俺が起きてくる、というのをよく知っているのだ。
あの犬が隣の家に来てからかれこれ五年くらい、このルーティンは変わらない。
「んん?」
なんだか今日は様子が違う。俺の朝食が無い。
「あの犬、寝坊でもしたのか?くっそ、朝めし食いそびれたか。」
こういうことはまれにある。俺がサークルの飲み会でつぶれていた時や、母親が体調を崩した時や、犬が検診だか何だかでいなかった時だ。
大学へ入ってからは朝起きられない日が増えていたし、そういえば先週の試験お疲れ飲みの翌日も朝めしは食わなかった気がする。
そういう日は大抵、母親が作り置きしてくれた冷えた朝めしを一人で用意して食べる。一人暮らしの奴らを羨ましく思う反面、母親におんぶにだっこ状態のいまの暮らしを捨てることもできない。朝めしが用意されているって幸せだな。
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