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アインスはひとりだった。
11歳で一般兵として軍に入った時から、ひとりだった。
友人と呼べるような仲の同僚などいなかった。はずだ。
正直あまり覚えていない。まあ覚えていないならいなかったんだろう。
とりあえず同僚の中にはいなかった。
二人一組になって手合わせしましょうみたいなアレが辛かった。
周りがさっさとペア組みやがるからあぶれるし、「じゃあ先生とペアになろうねー」みたいなノリでいつも教官と手合わせしてボッコボコにされた。
滅茶苦茶痛かった。毎日眠れなくて不眠気味なのに、毎日容赦なくあの手この手でボッコボコにされた。腹が立ったもんだから、頭ぐらんぐらんしてる中我武者羅に殴りかかって何とか一本取ろうと足掻いた。
他の奴らが教官と手合わせする時はこんなに酷くしないじゃないかってくらい容赦なくやられた気がする。気がするだけかな。
今となっては有り難いと思っている。周りの新米ペーペーよりずっとレベルの高い相手と戦うことで、ずっと早く強くなれた。つもりだけど。
今思うと、それも理由の一つだったのかも知れない。
いや、やはりふてぶてしい顔つきや態度の問題か。
目つきが悪いからか付き合いが悪いからか美人じゃないからか。
よく分からんがまあ、なんというか、浮いてた。
教官になす術もなくボロ負けする度にこそこそ笑われてたし。
からかってくるから無視してたらエスカレートしたりとか。
床に散らばった備品のペンを拾っていたら背中踏まれた事もあった。
みすぼらしさをせせら笑ってくるお金持ち様に舌打ちしたらぶち蹴られた。
全部そんなことあったなぁって感じで鮮明には覚えてない。
もっと色々あった気もするし、ぜんぶ夢だった気もする。どうでもいい。
どうでもいいけど全員口内炎になればいいと思う。
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